この夏、神田外語大学・神田外語学院の在学生78名が、宮城県、福島県を訪れ被災地の子どもを支える「教育支援ボランティア」に取り組みました。
神田外語グループでは、3月11日に発生した東日本大震災直後から、学内外での募金活動や被災学生に対する支援に加えて、グループ内に蓄積されたノウハウやリソースを活かした教育分野での復興支援に取り組んで来ました。
なかでも重視してきたのは被災地の小学生に対する外国語活動支援で、既に津波による甚大な被害を受け、ALT教員の帰国などに直面していた千葉県旭市の小学校において、同県に所在する神田外語大学の学生ボランティアが外国語活動の支援(担任教員とのティームティーチング)を行っておりました。
・千葉県:旭市(5月下旬~7月中旬/6名)
そしてこの夏、さらなる支援活動を希望する学生の声を受け、
・宮城県:亘理町(8月9日~11日/16名)
・宮城県:東松島市(8月22日~26日/20名)
・宮城県:女川町(8月30日~9月1日/15名)
・宮城県:南三陸町(9月6日~9日/21名)
・福島県:三春町(9月5日~9月7日/6名)
の5地域の学校や仮設住宅などで合計18日間、現地での準備や移動日を含めると28日間に渡り、小学生・中学生を対象にゲームを通した英語指導や環境整備、スポーツを通じた触れあい等、フィールド活動を展開しました。その活動の一部をご紹介いたします。
特別レポート:
福島県三春町「三春小学校」「御木沢小学校」での
教育支援ボランティア活動報告
三春小学校に着き、校長先生にお話を伺うと、「この地域の小学校で英語を教えていたALT(Assistant Language Teacher)の先生が、震災後帰国してしまったこともあり、現状、担任の先生が苦労して英語を教えている。子どもたちも『外で思う存分遊べない』『プールに入れない』など、かなりストレスが溜まっている状態。そんな中、学生ボランティアの方々が来てくれるということで、本当に感謝している。子どもたちも楽しみにしているので、宜しくお願いします」というありがたいお言葉をいただきました。
三春小学校では、高学年5クラス(5年生3クラス、6年生2クラス)に対して、1校時~5校時まで1クラスずつ、2日間にわたってレッスンを行ないました。レッスンプラン及び教材は、神田外語大学の研究教育機関である「児童英語教育研究センター」の職員とともに、学生たち自らが作成しました。
レッスンの最初の方は学生たちも緊張気味で、進行について小声で話し合う姿も見受けられましたが、子どもたちが元気に反応してくれることも手伝い、すぐに自分たちのペースで進められるようになっていました。少し驚き、感心したのは、ほとんどの子どもたち(特に6年生)が、学生が首から提げているアルファベットで書かれたネームプレートを読める、1~20の数字や1月~12月を英語で(ほどんど)言える(=習っている)ということでした。そんな子どもたちに、「20~100までの数字」「どの月がどの季節(Spring/Summer/Fall/Winter)に入るか」「教室内にある身の回りのもの(掛時計、定規、消しゴム、ペン、机、イス、窓など)の英語表現、またそれがどのような状態にあるか(机の上=on/机の下=under/机のそば=by など)」「国名(America/China/France/India/Australia など)とその国を類推させるもの(America→the Statue of Liberty/China→pandas/France→the Eiffel Tower など)」などを、用意してきたイラスト付カードで分かりやすく丁寧に教えていました。子どもたちは、学生の発声の後大きな声でリピートしたり、子どもたち同士で英語を言い合ったり、楽しそうに学んでいました。
中でも一番盛り上がったのは、100までの数字の言い方を確かめながらゴールを目指す「数字すごろく(へびとはしご)」と、トランプのババ抜きのような「Go Fish!」というカードゲームで、どちらも子どもたち同士で競い合うゲーム性の高いものでした。
「数字すごろく」は、サイコロを振り、出た数字を英語で言ってから、1~100までの数字がマス目にふってあるすごろくボードを、出た数字分、マス目に書いてある数字を英語で読みながら進みます。途中に出てくる動物の名前を英語で答え、「4マス進む/戻る」「一回休み」等しながらゴールを目指すゲームです。「Go Fish!」は、掛時計、定規、消しゴム、ペン、机、イス、窓などのイラスト付英語カードを、手札として2~3枚持ち、ババ抜きの要領で相手の手札から1枚抜き、同じ手札が手元に揃ったら捨て、手札が無くなった人から抜けていくゲームです。自分の手札と同じものを持ってそうな相手に、「Do you have a ~~(たとえばdesk)?」と聞き、聞かれた人は、持っていれば「Yes!」と答え相手にカードを渡す。持ってなければ、「No! Go Fish!」と答え、聞いた人が真ん中にあるカードの山から1枚引く。ポイントは、「Do you have a ~~?」と聞くということは、その人は「~~のカードを持っている」ということにいかに早く気付くか、自分が聞いたり聞かれたりしてないときも、しっかりと聞いていないと早くあがれない ということです。勘のいい児童はすぐに気付きます。何グループかに分けて実施しましたが、どのグループも白熱していて、いろんなところから大きな歓声があがっていました。
お昼休み時間も子どもたちと一緒に過ごし、特に約10年ぶりに食べる“給食”に「懐かしい!おいしい!」と学生たちの方がはしゃいでいるようでした。
2日間さまざまなレッスンを実施し、お別れのときは皆で記念撮影をしたり、学生たちが子どもたちに囲まれ感謝の握手攻めを受けたり、歌を歌ってくれるクラスもあったりと、すっかり打ち解けた子どもたちからの思わぬプレゼントに、感動と充実感からか涙ぐむ学生もおりました。
3日目は、御木沢小学校に伺いました。各学年1クラスずつで、1年生は5名しかいない小さな小学校ですが、校庭は広く緑に囲まれたすばらしい小学校でした。校長先生にお話を伺うと、「子どもたちは3.11以降、放射線の影響で教室や体育館でしか遊ぶことができなかった。7月に校庭の表土除去を行なってからは数値が下がったので、少しずつ外で遊べるようになったが、プールに入れないのが可哀そうですね。ALTの先生が帰国したままですので、今回のレッスンに期待していますよ」と、三春小学校同様の悩みを抱えつつ、我々を快く受け入れてくれました。
こちらでは、1・2年生は一緒に、3~6年生は学年ごとに、1校時~5校時までレッスンを行ないました。三春小学校の時と違って、低学年の子どもたちにもレッスンをしたわけですが、学生たちは事前準備をしっかりしてきたようで、子どもたちも小さな体から目一杯声を出し、楽しそうに学んでいました。高学年の子どもたちも、三春小学校同様に熱心に学生の話を聞き、大きな声で英語を話し、夢中になってゲームに取り組んでいました。
5校時が終了し、校長室を間借りした控室で休憩していると、1年生が全員で書いた可愛い「寄せ書き」を持ってきてくれました。帰り際には、たくさんの子どもたちがお見送りにきてくれ、学生たちも感激し「もう終わっちゃうんだぁ・・・。もっとここにいたいなぁ」など、名残惜しそうな感想を漏らしていました。
学生たちに3日間を通した感想を聞いてみると、一様に「子どもたちに英語を通じて少しでも元気を与えたい、という気持ちと、実際に出来るのか、という不安を抱きつつ参加したが、子どもたちと接するとすぐに不安は吹き飛び、一所懸命学ぼうとする姿を見て逆に元気をもらった。また機会があればぜひ参加したい」というものでした。
この3日間を通して、「ボランティア」というものについて改めて考えさせられました。
「ボランティア」は決して「押し付け」であってはなりません。
「被災地の方々に対して、何か力になりたい。少しでも元気になってほしい」という強い思いを抱き、思うだけではなく「行動」することが大切、というか「行動」しなければ意味がないわけですが、力になりたい「何か」が、受け手にニーズに合っていなければ、迷惑以外の何物でもなく「押し付け」になってしまいます。今回は、福島県の白河にある神田外語グループの語学研修センター「ブリティッシュヒルズ」の担当者が小学校のニーズをしっかりと把握・調整したことで、そして何よりも、教育ボランティアを受け入れていただいた校長先生はじめ小学校の先生方のご理解・ご協力があったことで、子どもたちの「笑顔」が得られたのだと思います。学生たちも、子どもたちと正面から向き合い本当にすばらしいレッスンをしました。教職課程を履修している彼らにとっても、自分たちの将来に対しとても貴重な経験になったことでしょう。
最後に、我々を温かく迎え入れてくれた三春小学校、御木沢小学校の先生方、そして子どもたちに本当に感謝いたします。神田外語グループでは、今後も継続して、被災地への教育支援ボランティアを行なう学生たちをサポートしてまいります。
▲御木沢小学校の1年生から頂戴した寄せ書き
参加学生の感想: